ねこ背になると転倒しやすくなります。
『ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜』
ねこ背による転倒は、背中の曲がり(胸椎の後弯)が強くなることではなく、腰が伸びてしまうこと(腰椎の後弯)が原因であることがわかってきました。
では、どの程度、腰が伸びてしまうと転倒のリスクが高まるのでしょうか?
今日はこの疑問を明らかにした研究をご紹介しましょう。
Reference)
Spinal sagittal contour affecting falls: Cut-off value of the lumbar spine for falls
Yoshinori Ishikawa, 2013
対象は地域在住の高齢者213名(平均年齢70.1歳)です。
計測は大きく分けて、ねこ背の角度、脊椎の柔軟性、バランス能力、背筋の筋力の4つとしました。
計測の詳細は以下の通りです(専門用語も含むので読み飛ばしOKです)。
・ねこ背の角度:胸椎の後弯、腰椎の前弯、脊椎の傾き
・脊椎の柔軟性:体幹の前屈、後屈
・バランス能力:重心動揺計を用いた7つの項目
・背筋の筋力:等尺性収縮での背筋筋力
これらの計測を転倒したことがあるグループ29名、転倒したことがないグループ184名とで比べました。
その結果…
・転倒は、年齢、腰椎前弯角度、脊椎の傾き、バランス能力、背筋の筋力と関係がありました。
・また、多変量ロジスティック回帰分析により、その中でも腰椎の前弯角度がもっとも関係が深いことがわかりました。
・さらに、単変量ロジスティック回帰分析により、腰椎の前弯角度が3度以下になると転倒しやすくなることがわかりました。
やはり、ねこ背の転倒には腰椎の前弯が減少し、腰が伸びてしまう後弯化が要因のようですね。
さらに、腰椎の前弯が3度以下になると転倒しやすくなることが明らかになりました。
腰椎の前弯角度の正常値は様々な報告がありますが、概ね30度程度とされています。
✳︎写真のLLが腰椎の前弯角度(lumbar lordosis angle;LL angle)です。
これを参考にすると、3度以下というとほぼ腰椎の前弯がなくなっており、(フラットバック:flat back)の状態になります。
では、この角度は自分で計測することは可能なのでしょうか?
自分の腰椎がどのくらい後弯してきているか、自分で知りたいですよね。
しかし、残念ながら、今のところ計測する方法はありません。レントゲン撮影か、あるいはこの論文で使用されているSpinalMouseという計測器を用いることが必要となります。
簡易に自分で腰椎の前弯角度を計る方法が見つかりましたら、このブログで紹介していこうと思います。
そのうち、スマホでこのSpinalMouseのように計測できると良いのですが…
どなたか、開発をお願いしますm(_ _)m
さて、ねこ背と転倒の関係について3回にわたってお話ししてきました。
ねこ背になると転倒しやすくなる。その原因は腰椎の前弯が少なくなり、ほぼまっすぐ(3度以下)になると転倒リスクが高くなる、転びやすくなることがわかりました。
では、ねこ背とともに腰椎の前弯の減少をどのように予防したら良いのでしょうか?
これについては、またの機会にご紹介しましょう。
ねこ背シリーズ
ねこ背シリーズ①:ねこ背になると歩き方も変わる?
ねこ背シリーズ②:ねこ背になると生活がつまらなくなる?
ねこ背シリーズ③:「背が低くなったんじゃない?」と言われた要注意!
ねこ背シリーズ④:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜
ねこ背シリーズ⑤:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜
ねこ背シリーズ⑥:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜腰がまっすぐになると…〜
ねこ背シリーズ⑦:自分でねこ背を計る方法(前編:科学的根拠の確認)
ねこ背シリーズ⑧:自分でねこ背を計る方法(後編:C7PL2.0をやってみよう!)
ねこ背シリーズ⑨:ねこ背と骨盤の代償運動を理解しよう
ねこ背シリーズ⑩:なぜ、ねこ背になるのか?
ねこ背シリーズ⑪:ねこ背の原因は背筋の霜降り化?
ねこ背シリーズ⑫:ハイヒールを履くとねこ背になる?
ねこ背シリーズ⑬:ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜
ねこ背シリーズ⑭:ねこ背になると肩が上がらなくなる?
ねこ背シリーズ⑮:座る姿勢がねこ背の原因になる?
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