さて、今回は自分でねこ背を測る方法をご紹介しましょう。
まず、姿見の前に横向きで立ちます。この時はなるべくおしりのラインが出るような格好が良いです。
次に、顔を下に向けます。首の後ろを触るとボコッとした骨の突起が触れますか?ここが棘突起というところです。触れたら、ここを指で押さえながら姿見をみましょう。
指で押さえた突起から鉛直線(床への垂線)を下ろしたときに、おしりのふくらみの部分へ線が下りてくると「正常」であり、ねこ背でない美しい姿勢となります。
これがおしりではなく、骨盤の横に線が下りてくるとねこ背の可能性が高くなります。
いかがでしょうか。ぜひ、お風呂に入る前に測ってみてください。そして、自分の姿勢をしっかりと把握して、もし、ねこ背であればこのブログをしっかり読んで対応していきましょう!
では、ここからは前回のおさらいとともに、なぜ、このような計測方法にいたったのかということを説明していきます(長文なのでスルーOKです)。
前回、ねこ背を計測する手法としてC7PLをご紹介しました。C7PLのCは頚椎(Cervical)を意味しており、C7というのは7番目の頚椎(第7頚椎)のことでしたね。PLは鉛直線(plumb line)を意味しているので、C7PLは第7頚椎からの鉛直線が骨盤内のどの位置を通るかによって脊椎のアライメント(Global spinal alignment)を評価するというものでした。
正常ではC7PLは仙骨上を通り、胸椎の後弯が進むとC7PLは前方へ偏位し、大転子に近づいていきます。そして、さらに胸椎の後弯が進み、腰椎の前弯がなくなってくるとC7PLは大転子からその前方へ位置するようになります。つまり、C7PLが前方への偏位すればするほど、ねこ背は強くなり、転倒のリスクが高まるわけです。
C7PLはねこ背の計測方法として脊椎外科の領域でも一定のコンセンサスが得られている分析方法です。
それでは、このC7PLをどうやって姿勢観察に応用していけば良いのでしょうか?
2007年、名古屋大の安倍氏らは、C7PLを姿勢観察で再現できるという研究報告をしました。これは第7頚椎の棘突起と大転子をランドマーク(目印)として得られた値とレントゲンにより得られたC7PLの値を比較した研究であり、双方に統計学的な有意差はなく、正の相関関係(r=0.699)を認めた、というものです。つまり、第7頚椎と大転子をランドマークにすることで姿勢観察でもC7PLと同様に、ねこ背の度合いを推測することが可能であることを示したのです。
しかし、いざ自分でやってみるとわかるのですが、ランドマークである大転子がわかりにくいんです。通常、大転子は股関節を内外旋させることで触診するのですが、そのようなことは理学療法士でなければできません。
そうなると大転子ではない、誰でも簡単にわかる別のランドマークを探す必要があります。
そこで、今回は「おしり」をランドマークにしてC7PLを推測してみます。これを便宜的にC7PL2.0と名付けましょう。
なので、C7PL2.0のランドマークは第7頚椎の棘突起とおしりの2つになります。
では、なぜおしりをランドマークにするのか?ということですが、通常のC7PLでは第7頚椎の中心をランドマークとしますがC7PL2.0では第7頚椎の棘突起となります。つまり椎体の中心と棘突起までの距離の分だけ後方にランドマークを移動するわけです。この移動距離は概ね2〜3cmになります(個人差はあり)。
これに対して、C7PLの正常な終点は第1仙骨の後方になるので、C7PL2.0の正常な終点はそこから2〜3cm後方、つまりおしりのふくらみ部分になるわけです。
ぜひぜひ、PTさんなどは臨床でも使用してみてください。
美しい姿勢は、第7頚椎棘突起からの垂線がおしりのふくらみの部分にくればいいわけですね。
ねこ背シリーズ
ねこ背シリーズ①:ねこ背になると歩き方も変わる?
ねこ背シリーズ②:ねこ背になると生活がつまらなくなる?
ねこ背シリーズ③:「背が低くなったんじゃない?」と言われた要注意!
ねこ背シリーズ④:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜大規模研究による検証〜
ねこ背シリーズ⑤:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜本当の犯人は?〜
ねこ背シリーズ⑥:ねこ背になると転倒しやすくなる 〜腰がまっすぐになると…〜
ねこ背シリーズ⑦:自分でねこ背を計る方法(前編:科学的根拠の確認)
ねこ背シリーズ⑧:自分でねこ背を計る方法(後編:C7PL2.0をやってみよう!)
ねこ背シリーズ⑨:ねこ背と骨盤の代償運動を理解しよう
ねこ背シリーズ⑩:なぜ、ねこ背になるのか?
ねこ背シリーズ⑪:ねこ背の原因は背筋の霜降り化?
ねこ背シリーズ⑫:ハイヒールを履くとねこ背になる?
ねこ背シリーズ⑬:ねこ背と柔軟性 〜腰椎の柔らかさが大事〜
ねこ背シリーズ⑭:ねこ背になると肩が上がらなくなる?
ねこ背シリーズ⑮:座る姿勢がねこ背の原因になる?
Reference
阿部友和, 他:姿勢観察による脊柱saggital balanceの評価. 臨床整形外科42:923-926, 2007
Ce ́dric Berrey, et al:Compensatory mechanisms contributing to keep the sagittal balance of the spine. Eur Spine J 22:834–841, 2013
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