リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?


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ディズニーランドの「スター・ツアーズ」は、なじみのあるフライトシュミレーターである。これは、ライドの上下左右の動きに画面の映像を合わせることで、無意識的に飛んでいるかのような感覚にさせるバーチャルリアリティ(VR)システムである。

このように、ヒトは、動作制御に視覚的影響を多大に受けることが知られている。

今回の報告は、歩行時でも簡単な視覚的フィードバックにより、無意識的に歩行能力を変化させることが可能か検証したものである。

reference)

Effects of implicit visual feedback distortion on human gait.

Experimental Brain Research, 2012

被験者は、12名の健常者。

トレッドミルを使用し、モニター上に表示された左右下肢のステップ距離のメーターを見ながら、快適速度で歩行させた。

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この棒グラフは、事前に得られた快適歩行時の平均的な左右の歩幅の対称性を100%として表示したものある。実験前の段階では、全ての被験者がモニターからの視覚的フィードバックを受けて100%を維持することが可能であった。

実験①では、被験者に内緒で、右下肢の棒グラフの最大値100%を2%づつ114%まで増加させ、その後、再度、2%づつ減少させて100%まで戻した。そして、その際の実際の歩幅の対称性を計測した。

実験②では、実験①と同様の介入を行い、その際、1000から7を引き算する認知課題を加えた。

その結果、実験①では棒グラフの増減に伴い、実際の歩幅も同じように増減した。しかしながら、実験②では、歩幅の増減は見られなかった。

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ということ。

この報告から、棒グラフのような単純な視覚的フィードバックにおいても、無意識下に歩幅を変化させることが可能であることがわかった。これは、いわゆるCPGによる反射的歩行制御が、歩幅の増加という固有感覚ではなく、視覚という上位の修飾を強く受けていることを示唆している。また、このような視覚的フィードバック効果は、認知的な荷重が必要であることが推測される。

つまり、簡易的な視覚的フィードバックにおいても無意識的に歩行制御を変化させることが可能だが、その効果には、認知機能が大きく寄与している可能性がある。

セラピストは、フィードバック付加時に、世間話は禁物だね。 

 

 

脳卒中リハビリシリーズ

脳卒中リハビリ①:バランス感覚には、足底感覚へのアプローチ! 

脳卒中リハビリ②:自転車トレーニングでは、速度一定でお願いします。

脳卒中リハビリ③:脳卒中早期からFES自転車運動で体幹機能を高めよう!

脳卒中リハビリ④:FES自転車運動は姿勢制御に効果的

脳卒中リハビリ⑤:自転車トレーニングは、ただ漕いでるだけじゃダメ。

脳卒中リハビリ⑥:自転車で突っ張る筋肉をほぐせるかも。

脳卒中リハビリ⑦:歩行スピードを高めたいなら、足関節背屈筋力を高めよう。

脳卒中リハビリ⑧:歩行距離をのばすには、やっぱり足関節背屈筋力?

脳卒中リハビリ⑨:上手に歩くためには、エンジンとブレーキ、どっちが大事?

脳卒中リハビリ⑩:歩行立脚期の機能改善には、この装具で。

脳卒中リハビリ⑪:遊脚期の足関節背屈を増強させる新しいトレーニング

脳卒中リハビリ⑫:視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?

脳卒中リハビリ⑬:フィードバック療法で麻痺側の足を使えるようにしよう。

脳卒中リハビリ⑭:非麻痺側下肢も見逃すな。

脳卒中リハビリ⑮:ただ自転車を漕ぐだけではダメな根拠

脳卒中リハビリ⑯:片麻痺にもインソールは有効。

脳卒中リハビリ⑰:中殿筋への機能的電気刺激療法は、歩行の対称性を改善させます

脳卒中リハビリ⑱:効果的な立ち上がり練習の方法

脳卒中リハビリ⑲:立ち上がり動作と荷重感覚

脳卒中リハビリ⑳:筋力トレーニングだけでは効果なし

 

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