リハビリmemo

理学療法士・トレーナーによる筋トレやダイエットについての最新の研究報告を紹介するブログ

非麻痺側下肢も見逃すな。


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足関節捻挫をすると、無意識に跛(びっこ)を引いて歩くようになる。

これは、捻挫をした足に体重を乗せないように、同側または反対側の下肢の筋活動のパターンを変化させる両下肢間の相互協調性(interlimb coordination)による結果である。

この「interlimb coordination」は、脳卒中後の歩行に見られる麻痺側の不使用、非麻痺側の過剰努力においても関与している。

今回の報告は、非麻痺側下肢の運動感覚入力を変えることで、麻痺側下肢の運動がどのように変化するか調査したものである。

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Impaired muscle phasing systematically adapts to varied relative angular relationships during locomotion in people poststroke.

Journal of Neurophysiology, 2011

対象は、慢性期の脳卒中患者18名。

自転車のクランク角度を左右別々に調整できるsplit-crank自転車を用い、非麻痺側のクランク角度を30度づつ増加させた。

その際の非麻痺側、麻痺側下肢の筋活動(内側広筋、大腿直筋、前脛骨筋、ヒラメ筋)をサンプリングした。

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その結果、非麻痺側、麻痺側ともに、クランク角度の変化に応じて筋活動パターンの変化が見られた。また、麻痺側の内側広筋(単関節筋)は大腿直筋(二関節筋)に比べ、大きな筋活動パターンの変化が見られた。

この結果から、非麻痺側のクランク角度を調整することによって、麻痺側の筋活動パターン変化させ、interlimb coordinationを正常化させる可能性が示唆された。

とのこと。

 

脳卒中後の歩行障害は、interlimb coordinationにより、運動・感覚麻痺の重症度に応じて、非麻痺側・麻痺側下肢の固有の筋活動パターンを形成する。このパターン形成は、びっこと同様、無意識下に生じるものであり、結果として「非麻痺側の過剰努力」による「麻痺側下肢の不使用」を作り出す。

クランク角度のような非麻痺側下肢への感覚入力が、interlimb coordinationを調整し、麻痺側下肢の筋活動パターンを変えるということは、臨床において多くの示唆を与えてくれる。

セラピストは、interlimb coordinationを考慮して、麻痺側下肢だけに注視するのではなく、非麻痺側下肢への介入を検討してみてもいいかも。

 

 

脳卒中リハビリシリーズ

脳卒中リハビリ①:バランス感覚には、足底感覚へのアプローチ! 

脳卒中リハビリ②:自転車トレーニングでは、速度一定でお願いします。

脳卒中リハビリ③:脳卒中早期からFES自転車運動で体幹機能を高めよう!

脳卒中リハビリ④:FES自転車運動は姿勢制御に効果的

脳卒中リハビリ⑤:自転車トレーニングは、ただ漕いでるだけじゃダメ。

脳卒中リハビリ⑥:自転車で突っ張る筋肉をほぐせるかも。

脳卒中リハビリ⑦:歩行スピードを高めたいなら、足関節背屈筋力を高めよう。

脳卒中リハビリ⑧:歩行距離をのばすには、やっぱり足関節背屈筋力?

脳卒中リハビリ⑨:上手に歩くためには、エンジンとブレーキ、どっちが大事?

脳卒中リハビリ⑩:歩行立脚期の機能改善には、この装具で。

脳卒中リハビリ⑪:遊脚期の足関節背屈を増強させる新しいトレーニング

脳卒中リハビリ⑫:視覚的フィードバックで知らないうちに歩行が変わる?

脳卒中リハビリ⑬:フィードバック療法で麻痺側の足を使えるようにしよう。

脳卒中リハビリ⑭:非麻痺側下肢も見逃すな。

脳卒中リハビリ⑮:ただ自転車を漕ぐだけではダメな根拠

脳卒中リハビリ⑯:片麻痺にもインソールは有効。

脳卒中リハビリ⑰:中殿筋への機能的電気刺激療法は、歩行の対称性を改善させます

脳卒中リハビリ⑱:効果的な立ち上がり練習の方法

脳卒中リハビリ⑲:立ち上がり動作と荷重感覚

脳卒中リハビリ⑳:筋力トレーニングだけでは効果なし

 

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